はじめに、当院は去る平成23年3月11日に発生した東日本大震災に被災し、全患者様の避難を余儀なくされました。患者様は一人のけが人もなく避難できたものの、病院建物は損壊が著しく全壊状態で使用不能となってしまったため建て替えが必要となりました。そのため、患者様の避難生活、仮設建物での病院運営、そして、病院機能の早急な復旧復興に向けた取り組みが必要となりましたが、お陰様で、多くの方々のご支援・ご協力によりまして平成25年5月25日にはすべての工事が完成し診療を開始することが出来ました。これもひとえに多くの皆様方から頂きましたご支援・ご協力のお陰様とこの場をお借りして心より感謝・御礼を申し上げます。
つきましては、これまで頂きました多大なるご支援・ご協力に対しまして微力ながら地域でのより良い医療の提供を実践していくことで恩返しができればと考えております。
さて、当院は、前院長が昭和35年2月13日福島県安達郡大玉村に病院を開設したことに始まります。昭和41年4月には隣町である本宮市(旧本宮町)に移転し現在に至っております。当市は福島県の地理的中央に位置し、西には高村光太郎の智恵子抄でお馴染みの秀峰安達太良山、東には阿武隈川が流れております。また、以前から、奥州街道と会津街道の交差点で、現在も国道4号線、東北自動車道、そして磐越自動車道とのジャンクションに一番近いインターチェンジもあり交通の要衝でもあります。更に、JR本宮駅、交通網が整備された事により新幹線の停車駅である郡山駅、そして、福島県立医大にも近く、県内外の東西南北地域や都心にも移動しやすく、自然豊かで有りながら交通網が発達している地域に位置しております。
当院は、この地域で唯一ベッドを持った21床の単科の精神科病院として開設以来、地域に根ざした病院運営を心がけて参りました。以後、地域の医療情勢に応じて増床を重ね、一時は251床まで増床いたしました。しかし、その後、「入院中心の医療から社会復帰の促進」が叫ばれるようになり、それに対して、院内では病棟の機能分化をはかり多職種で構成した社会生活支援室を組織して退院支援プログラムを作成・実施、デイケア開設、生活の場としてのグループホームの開設、訪問看護の実施、家族会の運営、就労支援のための作業所の運営、更には、より美味しい食事の提供のために「凍結含浸法」を用いた「軟らか食」の提供など患者様方の社会復帰のための取り組みを行政機関や他の事業所等と積極的に連携をはかりながら活動をしてきた結果、212床まで病床を減らし、現在に至っております。
一方、高齢社会への対応として、平成9年5月に在宅復帰を目指した「介護老人保健施設まゆみの里」を開設しました。現在は「居宅介護支援事業所」や本宮市から委託を受け「地域包括支援センター」も併設し病院と施設との連携も図りながら運営しております。
震災による病院建て替え工事完成後は、更なる社会復帰の促進のため、病棟機能を再編し、現在は、4つの病棟を精神科急性期治療病棟、精神科一般病棟、精神科療養病棟に病棟機能を分け病態に応じた治療により更なる社会復帰の促進に努めております。また、最近の児童思春期の精神科的患者様の増加に伴い平成26年4月からは児童精神科専門医による「子どものこころ・発達」専門外来を開設しております。さらに、平成27年2月に在宅患者様の就労支援のための施設として就労継続支援B型事業所「こころの郷あだたら」を開設し、患者様の支援体制の充実に努めております。この様に、子どもからお年寄りまで、外来治療から入院治療そして社会復帰、在宅生活支援等幅広い活動を実施しております。
現代社会は、不安の時代と言われております。特に、福島県におきましては、震災・原発事故による被害の影響が未だ解決されず現在でも多くの方が避難生活を余儀なくされ、従来からの精神的な患者様方だけではなく、ストレス関連のこころの病の方も増えている現状にあります。更には、これから益々高齢化が進む中で認知症に関連した精神科的対応が必要な患者様、そして、児童思春期の患者様が増えてきている現状もあります。
国の政策においては、精神保健福祉法が改正され、更に、今後は長期在院患者様の更なる退院促進、早期の社会復帰、病床の施設化そして、精神科病床の削減、更には、地域包括ケアの実施等が予定され、これまでにない変革を迫られる時代のように思われます。
このような状況の中、当院では、基本理念として“信頼”を掲げ、患者様方はもちろんのこと、ご家族様、そして、地域の方々に信頼される、より良い医療・福祉・保健活動を統合的に展開・実践して行くことを全職員常に意識し、一致協力してより良い運営に努めております。更にそのために、9つの指針を定め、それをロゴマークに九つの○で表現し実践しております。
あらためて、震災からの復旧復興に際しましてのご支援ご協力に感謝申し上げますと共に、今後ともスタッフ一同一致協力して、地域で唯一のベッドを持った精神科病院として地域に根ざした精神科医療・福祉・保健活動に取り組んで参りますので、皆様方のご支援とご協力をお願い申し上げます。
昭和35年 | 2月 | 大玉村にて東北病院開院 | |
昭和41年 | 4月 | 現在地へ移転 | |
昭和52年 | 10月 | 鉄筋コンクリート4階建の病棟を増築 | |
昭和56年 | 3月 | 落合紳一郎院長に就任 | |
昭和61年 | 4月 | 医療法人へ改組(医療法人東北病院) | |
平成 7年 | 5月 | 管理棟を移転改築 | |
平成 9年 | 4月 | 介護老人保健施設まゆみの里開設 | |
在宅介護支援センター開設(まゆみの里内) | |||
法人名を医療法人落合会に変更 | |||
平成10年 | 6月 | 福島県精神科救急医療システム事業精神科救急医療施設に指定(福島県) | |
平成12年 | 4月 | 共同住居(男子)開所 | |
指定居宅介護支援事業所開設(まゆみの里内) | |||
平成12年 | 7月 | 共同住居(男子)をグループホームへ変更し認可申請 | |
平成12年 | 10月 | 応急入院指定病院に指定 | |
平成12年 | 12月 | 新デイケア室・作業療法室完成(創立40周年事業) | |
平成14年 | 4月 | あだたらファーム開所 | |
平成16年 | 5月 | 共同住居(女子)開所 | |
平成17年 | 8月 | 共同住居(女子)をグループホームへ変更し認可 | |
平成17年 | 12月 | 日本精神神経学会より精神科専門医制度『研修施設』認定 | |
平成19年 | 4月 | 精神科訪問看護開始 | |
平成19年 | 5月 | 介護老人保健施設まゆみの里開設10周年 | |
平成22年 | 2月 | 東北病院開設50周年 | |
平成23年 | 3月 | 東日本大震災により東北病院全壊 | |
仮設病棟建設及び運用開始 | |||
平成23年 | 10月 | 旧病院解体工事着手 | |
平成24年 | 1月 | 新病院建設工事着手 | |
平成25年 | 3月 | 新病院完成 | |
平成26年 | 4月 | 禁煙外来開始 | |
平成26年 | 4月 | 「子どものこころ・発達」専門外来開設 | |
平成27年 | 2月 | 指定就労継続支援B型事業所「こころの郷あだたら」開所 | |
4月 | 本宮市より本宮第二地域包括支援センター業務を委託 | ||
平成28年 | 2月 | あったかカフェまゆみを開所 | |
令和 2年 | 2月 | 東北病院開設60周年 | |
令和 5年 | 4月 | 介護医療院うぐいすの森開設 |
理事長・院長
落合 紳一郎